木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

いつものように

いつも、無力な自分を憎んでばかりだ。 いつも、無能な自分を恨んでばかりだ。 いつも、無念の日々を過ごすばかりだ。 いつも、無情な現実を恐れてばかりだ。 想いを募らせるばかりでは何も伝わらない。 夢を描き続けるばかりでは何も始まらない。 遠い過去…

家路

見送るは、愛しき思い出。 見守るは、哀しき夕暮れ。 別れを告げる鐘が鳴る町。 聞き慣れた歌が響く公園。 カレーの匂いが漂う帰り道。 再会を誓い合った分かれ道。 泥だらけの靴と汗塗れの服。 泥だんごの罅と初めての恋。 傷だらけの掌と母の眼差し。 握り…

白い渦

誰もが己の正義を疑わない。 誰もが己の誤謬を認めない。 誰もが己の罪を受け入れない。 誰もが己の罰を受け止めない。 「誰にも嫌われたくない」 「誰かを嫌う勇気もない」 いつの間にか、そんなことさえ言えなくなってしまった。 いつの間にか、そんなこと…

思考停止

一日の始まりに食べるものさえ選べない。 一日の終わりに食べるものさえ選べない。 一日の始まりに聴く音楽さえ選べない。 一日の終わりに聴く音楽さえ選べない。 一日の始まりを彩る空の色さえ選べない。 一日の終わりを彩る空の色さえ選べない。 一日の始…

案山子

今日も、僕は笑っている。 今日も、あの子は泣いている。 僕が笑顔を零すその裏で、誰かが涙を流している。 僕が幸福に生きているその陰で、誰かが不幸なまま死んでいく。 僕の笑顔は、誰かの涙の上に存在している。 僕の幸福は、誰かの不幸の上に存在してい…

獣の如く

ただ、喰いたいから喰っている。 ただ、飲みたいから飲んでいる。 ただ、歩きたいから歩いている。 ただ、走りたいから走っている。 ただ、戦いたいから戦っている。 ただ、叫びたいから叫んでいる。 ただ、壊したいから壊している。 ただ、笑いたいから笑っ…

アレグロ

また一つ、季節が過ぎていく。 振り返ることもなく、季節が過ぎていく。 また一つ、生命が消えていく。 燃え尽きることもなく、生命が消えていく。 少しずつ、景色は変化していく。 泣いている暇もないくらいに、景色は変化していく。 少しずつ、世界は加速…

何もない世界

この世界に生まれた理由など、何もない。 この世界に生きている理由など、何もない。 この世界で生きてきた理由など、何もない。 この世界で生きていく理由など、何もない。 この世界に生まれた道理など、何もない。 この世界に生きている道理など、何もない…

誰も傷付けることのない者たち

土のはぐくみ。 花のゆらめき。 虫のさざめき。 鳥のさえずり。 川のせせらぎ。 風のささやき。 森のざわめき。 月のほほえみ。 生命は、生命を育てて生きている。 生命は、生命を与えて生きている。 生命は、生命を愛して生きている。 生命は、生命を燃やし…

春を想う

あなたが好きだと言っていた、煙草の味が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、言葉の色が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、絵の価値が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、歌の意味が分かるように…

本当のこと

追い付きたくて、 追い付けなくて、 追い越したくて、 追い越せなくて、 認めたくて、 認めたくなくて、 認められたくて、 認められなくて。 答えたくて、 答えられなくて、 答えて欲しくて、 答えてくれなくて、 教えたくて、 教えられなくて、 教えて欲し…

柘榴

毒を呑み、蜜を吐く。 赤く熟れた果実は、摘み取られる。 蜜を呑み、毒を吐く。 黒く膿んだ果実は、棄て去られる。 頭から潰された果実が、血の花を咲かせている。 中身まで砕かれた果実が、血の海に浮かんでいる。 ゆっくりと時間をかけて産み落とされた生…

火花を散らして

何かが、求めている。 何かを、求めている。 体が、生を求めている。 心が、死を求めている。 何かが、叫んでいる。 何かを、叫んでいる。 体が、生きたいと叫んでいる。 心が、死にたいと叫んでいる。 産声を上げた日から、体は生きることばかりを考えてい…

アポトーシス

あの恐怖は、身の程を知る為に必要だった。 あの屈辱は、身の丈を知る為に必要だった。 あの劣情は、卑しさを知る為に必要だった。 あの空白は、侘しさを知る為に必要だった。 あの挫折は、悔しさを知る為に必要だった。 あの離別は、悲しみを知る為に必要だ…

深夜高速

まだ、夜は明けない。 宛てのない旅を続けている。 果てのない道が続いている。 目的地も、帰り道もない。 終わりも、始まりもない。 ただただ、途方も無い暗闇に伸びる道があるだけだ。 ただただ、途方も無い空白を抱いた僕がいるだけだ。 ただただ、暗闇の…

心臓

どうして、もう少しあなたの声に耳を澄ませておかなかったのだろう。 どうして、もう少しあなたの言葉に耳を傾けておかなかったのだろう。 どうして、あなたの悲鳴に気が付くことが出来なかったのだろう。 どうして、あなたの孤独に気が付くことが出来なかっ…

嘘吐き少年

初めて、嘘を吐いた。 大丈夫ではないのに、大丈夫だと言った。 初めて、嘘を吐いた。 本当のことではないのに、本当のことだと言った。 初めて、嘘を吐いた。 好きな人に、好きではないと言った。 初めて、嘘を吐いた。 好きでもない人に、好きだと言った。…

陰を生きる

街灯に群がる羽虫のように、光にその身を灼かれている。 太陽に焦がれた咎人のように、光にその心を奪われている。 光は、残酷なくらいに優しい。 光は、冷酷なくらいに眩しい。 光は、大切なものを壊していく。 光は、大切なものを奪っていく。 塵と化した…

象牙の塔

居場所はない。 拠り所もない。 行くべき場所はない。 帰るべき場所もない。 救われたいわけではない。 満たされたいわけでもない。 何処かに行きたいわけではない。 何処かに帰りたいわけでもない。 誰も分かってくれない。 誰も代わってくれない。 誰も教…

匿名希望

泣いて許されるのなら、とうの昔に泣いている。 忘れて救われるのなら、とうの昔に忘れている。 死んで報われるのなら、とうの昔に死んでいる。 消えて愛されるのなら、とうの昔に消えている。 僕が泣いたところで、何も変わらない。 僕が忘れたところで、何…

ライター

何度も、手紙を書いた。 夜が明けるまで書いた。 涙が止まるまで書いた。 紙が擦り切れるまで書いた。 心が焼き切れるまで書いた。 涙では終わらせてはいけない想いがある。 涙では終わらせることが出来ない想いがある。 ただそれだけが、書く理由だ。 ただ…

椅子の主

この世に生まれ落ちた瞬間、一つの席を与えられた。 臆病者の席だ。 傍観者の席だ。 半端者の席だ。 敗北者の席だ。 選んだ覚えはない。 望んだ覚えもない。 選ばれた覚えはない。 望まれた覚えもない。 自分で選んだ席ではないから、満たされない。 自分が…

月が輝いている

今宵も、月が輝いている。 今宵も、満たされた顔で此方を見下している。 全くもって、気に入らない。 直ぐにでも、彼処から引き摺り下ろしてやりたい。 一人では輝くことも出来ない癖に、満たされた顔で僕を見下ろすな。 僕と似ている癖に、満たされた顔で僕…

液晶の住人より

いつもそうだ。 終わりは、突然だ。 終わりは、残酷だ。 いつもそうだ。 日常は驚くほど、容易く崩れ去る。 日常は呆れるほど、容易く壊される。 いつもそうだ。 理不尽な現実を、受け止めることしか出来ない。 理不尽な現実を、受け入れることしか出来ない…

星に願いを

煌々と輝く星を数えている。 煌々と瞬く星を眺めている。 才能と細胞を燃やしながら、輝いている。 感性と哲学を振り翳しながら、瞬いている。 次々と死んでいく星を数えている。 次々と消えていく星を眺めている。 才能と細胞に焦がれたまま、死んでいく。 …

ヒーロー

子どもの頃は、数え切れないくらい沢山の夢を抱いていた。 子どもの頃は、信じられないくらい沢山の夢を描いていた。 先生になりたかった。 医者になりたかった。 音楽家になりたかった。 ヒーローになりたかった。 強い人になりたかった。 優しい人になりた…

時計仕掛けの空論

ひとりの夜は長過ぎて、あなたのことを思い出す。 目を閉じれば、あなたの顔ばかりが蘇る。 目を閉じれば、あなたの匂いばかりが蘇る。 目を閉じれば、あなたの温もりばかりが蘇る。 目を閉じれば、あなたと過ごした日々ばかりが蘇る。 瞼の裏に張り付いたあ…

幸福論

誰もが幸せならば、誰かと笑い合うことはない。 誰もが幸せならば、誰かと語り合うことはない。 誰もが幸せならば、誰かと寄り添うことはない。 誰もが幸せならば、誰かと愛し合うことはない。 誰もが幸せならば、幸せを探し求めることはない。 誰もが幸せな…

あの日、僕は

あの日、僕は泣かなかった。 現実を受け入れたくなかったから。 あの日、僕は泣かなかった。 悲しみを受け止めたくなかったから。 あの日、僕は泣かなかった。 感情を曝け出すことが恥ずかしいことだと思っていたから。 あの日、僕は泣かなかった。 涙と一緒…

彼女のいない世界で

二〇一七年七月二日。 一年前の今日、僕は大切な家族を失った。 彼女は、人間ではない。 だけど、僕にとっては長い時間を共に過ごした大切な家族だった。 誰よりも活発で。 誰よりも好奇心旺盛で。 誰よりも臆病で。 誰よりも一生懸命で。 誰よりも正直で。 …