木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

あの頃、この頃

あの頃は大きいと思っていた校舎が、今ではこんなにも小さく感じる。

あの頃は高いと思っていた教壇が、今ではこんなにも低く感じる。

 

あの頃は遠いと思っていた星が、今ではこんなにも近く感じる。

あの頃は広いと思っていた空が、今ではこんなにも狭く感じる。

 

あの頃は長いと思っていた道が、今ではこんなにも短く感じる。

あの頃は速いと思っていた足が、今ではこんなにも遅く感じる。

 

あの頃は暗いと思っていた夜が、今ではこんなにも明るく感じる。

あの頃は憎いと思っていた街が、今ではこんなにも愛しく感じる。

 

 

 

あの頃は大きいと思っていた背中が、今ではこんなにも小さく感じる。

あの頃は高いと思っていた駄菓子が、今ではこんなにも安く感じる。

 

あの頃は遠いと思っていた国境が、今ではこんなにも近く感じる。

あの頃は広いと思っていた世界が、今ではこんなにも狭く感じる。

 

あの頃は長いと思っていた一日が、今ではこんなにも短く感じる。

あの頃は速いと思っていた毎日が、今ではこんなにも遅く感じる。

 

あの頃は暗いと思っていた歌が、今ではこんなにも明るく感じる。

あの頃は憎いと思っていた人間が、今ではこんなにも愛しく感じる。

 

 

 

 

 

あの頃は軽いと思っていた言葉が、この頃は重く感じる。

あの頃は多いと思っていた時間が、この頃は少なく感じる。 

 

あの頃は軽いと思っていた身体が、この頃は重く感じる。

あの頃は長いと思っていた人生が、この頃は短く感じる。

 

あの頃は弱いと思っていた羽虫が、この頃は強く見える。

あの頃は強いと思っていたあなたが、この頃は弱く見える。

 

あの頃は美しいと思っていた生が、この頃は醜く見える。

あの頃は醜いと思っていた死が、この頃は美しく見える。

 

 

 

 

 

あの頃信じていた神様が、この頃は死神に見える。 

あの頃恐れていた死神が、この頃は神様に見える。

 

  

 

無いものねだり

やりたいことばかりだ。

出来ないことばかりだ。

 

知りたいことばかりだ。

知らないことばかりだ。

 

言いたいことばかりだ。

言えないことばかりだ。

 

届けたいことばかりだ。

届かないことばかりだ。

 

 

 

叶えたい夢ばかりだ。

叶わない夢ばかりだ。

 

泣きたい夜ばかりだ。

泣けない夜ばかりだ。

 

消したい過去ばかりだ。

消せない過去ばかりだ。

 

戻りたい日々ばかりだ。

戻れない日々ばかりだ。

 

 

 

壊したいものばかりだ。

壊せないものばかりだ。

 

許したいものばかりだ。

許せないものばかりだ。

 

憎みたいものばかりだ。

憎めないものばかりだ。

 

愛したいものばかりだ。

愛せないものばかりだ。

 

 

 

変わりたい人ばかりだ。

変われない人ばかりだ。

 

満たされたい人ばかりだ。

満たされない人ばかりだ。

 

死にたい人ばかりだ。

死ねない人ばかりだ。

 

死にたくない人ばかりだ。

生きていたい人ばかりだ。

 

 

 

 

 

無いものねだりばかりの毎日だ。

 

無いものねだりばかりが人生か。

 

 

 

レイトショー

決して、思い通りの人生ではない。

決して、期待通りの人生ではない。

 

決して、脚本通りの人生ではない。

決して、幸福ばかりの人生ではない。

 

 

 

決して、挫折をする為に生まれたわけではない。

決して、裏切られる為に生まれたわけではない。

 

決して、血涙を流す為に生まれたわけではない。

決して、痛みを知る為に生まれたわけではない。

 

決して、脇役になる為に生まれたわけではない。

決して、不幸になる為に生まれたわけではない。

 

決して、人形になる為に生まれたわけではない。

決して、空白を知る為に生まれたわけではない。

 

 

 

僕は知りたい。

エンドロールのその先を。

 

僕は行きたい。

ラストシーンのその先へ。

 

 

 

 

 

連なる名前が示すものは、何だ。

流れる月日が語ることは、何だ。

 

乾いた毛布に残るものは、何だ。

破れた手紙に遺すことは、何だ。

 

 

 

この世界を殺すものは、何だ。

この世界を救うものは、何だ。

 

 

 

血の繋がり

滔々と流るもの。

脈々と続くもの。

 

沸々と滾るもの。

赤々と染まるもの。

 

酸化するもの。

受け継がれるもの。

 

淘汰されるもの。

美化されるもの。

 

 

 

才能を呪う者。

感性を笑う者。

 

才能を殺す者。

感性を失う者。

 

宿命を憎む者。

運命を愛する者。

 

宿命に死ぬ者。

運命を生きる者。

 

 

 

 

 

その血に、流されてはいけない。

その血に、殺されてはいけない。

 

その血を、濁らせてはいけない。

その血を、腐らせてはいけない。

 

 

 

この血に、流されてたまるか。

この血に、殺されてたまるか。

 

この血を、濁らせてたまるか。

この血を、腐らせてたまるか。

 

 

 

この血を、終わらせてたまるか。

 

 

 

 

 

全ての宿命よ。

全ての運命よ。

 

艶やかに、赤く濡れろ。

厳かに、赤く燃えろ。

 

 

 

全ての生命よ。

全ての幸福よ。

 

安らかに、其処で眠れ。

華やかに、永遠に続け。

 

 

 

 

鮮やかに、赤く染まれ。

 

 

 

革命前夜

一字に心が宿る。

一行に心が宿る。

一瞬に心が宿る。

一生に心が宿る。

 

一字に命が灯る。

一行に命が灯る。

一瞬に命が灯る。

一生に命が灯る。

 

 

 

心さえ殺せば、上手く笑えるか。

心さえ殺せば、上手く生きられるか。

 

命さえ生かせば、上手く笑えるか。

命さえ生かせば、上手く生きられるか。

 

 

 

一字に心を込める。

一行に心を込める。

一瞬に心を込める。

一生に心を込める。

 

一字に命を懸ける。

一行に命を懸ける。

一瞬に命を懸ける。

一生に命を懸ける。

 

 

 

憎み切らないと、愛し切れない。

愛し切らないと、憎み切れない。

 

死に切らないと、生き切れない。

生き切らないと、死に切れない。

 

 

 

 

 

ただただ、己の全てを込める。

ただただ、己の全てを懸ける。

 

 

 

ジョーカー

浮世に泣いて、浮世を嗤う。

浮世を憂いて、浮世を想う。

 

己を憎んで、己を愛する。

己を殺して、己を生かす。

 

 

 

誰も代わってくれない。

誰も分かってくれない。

 

いつも、一人だ。

ずっと、一人だ。

 

 

 

僕は、一人だ。

あなたは、一人だ。

 

僕も、独りだ。

あなたも、独りだ。

 

 

 

 

 

誰もが、独りだ。

 

 

 

ひぐらしの声

あなたがいなくなって、もう何度目の夏でしょうか。

あの日からずっと、覚めない夢を見ているようです。

 

 

 

あの時は、つまらないことで泣いていました。

あの頃は、くだらないことで笑っていました。

 

そんな小さな幸せが当たり前のことなどではないと、わたしは知りませんでした。

そんな小さな幸せがかけがえのないものであると、わたしは知りませんでした。

 

あなたがいた時には、知り得ないことでした。

あなたがいた頃には、分からないことでした。

 

あなたと生きたことを忘れないように、いつまで生きていられるのでしょうか。

あなたがくれたものを忘れないように、どこまで歩いて行けるのでしょうか。

 

 

 

あなたの生きた日々は苦しいものだったのでしょうか。

わたしはあなたに何かを与えることが出来たのでしょうか。

 

 

 

 

 

もう二度と聞くことはないあなたの声を思い浮かべて、

あの夏の日と同じ場所でひぐらしの声を聞いています。

 

 

 

どれほど季節が巡ろうとも、わたしはあなたのことを忘れません。

どれだけ心が揺れようとも、わたしはあなたのことを忘れません。

 

 

 

 

 

あなたに会えて、わたしは幸せでした。

あなたに会えて、わたしは本当に幸せでした。

 

あなたと生きて、わたしは幸せでした。

あなたと生きて、わたしは本当に幸せでした。

 

ありがとう、愛しい人よ。

さようなら、愛しい人よ。

 

ありがとう、愛しい日々よ。

さようなら、愛しい日々よ。

 

 

 

ありがとう。

さようなら。

 

 

 

 

 

八月十二日。

 

今は亡き友へ捧ぐ。