木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

深夜高速

まだ、夜は明けない。

 

 

 

宛てのない旅を続けている。

果てのない道が続いている。

 

目的地も、帰り道もない。

終わりも、始まりもない。

 

ただただ、途方も無い暗闇に伸びる道があるだけだ。

ただただ、途方も無い空白を抱いた僕がいるだけだ。

 

ただただ、暗闇の中を駆けてきた。

ただただ、空白を抱いて生きてきた。

 

 

 

テールライトは、背後しか照らさない。

ヘッドライトは、手前しか照らさない。

 

テールライトは、道を照らしてはくれない。

ヘッドライトは、道を照らしてはくれない。

 

この暗闇を、照らしてはくれない。

この空白を、満たしてはくれない。

 

何度も、戻ろうと思った。

何度も、帰ろうと思った。

何度も、辞めようと思った。

何度も、逃げようと思った。

 

 

 

だけど、休めば殺されてしまいそうで怖かった。

だけど、止まれば死んでしまいそうで怖かった。

 

だから、死ぬ気で走った。

だから、死ぬ気で生きた。

 

ただただ、擦れ違う光に目を奪われないように必死で駆けた。

ただただ、通り過ぎる光に振り払われないように必死で駆けた。

 

ただただ、眩し過ぎる世界に目を潰されないように必死で生きた。

ただただ、流れ過ぎる世界に振り落とされないように必死で生きた。

 

 

 

幾度も夜の帳を潜り抜けて、この場所に辿り着いた。

僅かな月の光を手掛かりにして、この場所に辿り着いた。

 

 

 

走り続けて、初めて分かった。

生き続けて、初めて分かった。

 

走り続けることでしか、その暗闇を照らすことは出来ない。

生き続けることでしか、その空白を満たすことは出来ない。

 

走り続けた日々があるからこそ、今の僕がある。

生き続けた日々があるからこそ、今の僕がいる。

 

今の僕があるのは、あの日があったからだ。

 

あの日がなければ、今の僕はいない。

 

 

 

 

 

宛てのない旅を続けている。

果てのない道が続いている。

 

目的地も、帰り道もない。

終わりも、始まりもない。

 

ただただ、途方も無い暗闇に伸びる道があるだけだ。

ただただ、途方も無い空白を抱いた僕がいるだけだ。

 

ただただ、この道を駆けるだけだ。

ただただ、この日々を生きるだけだ。

 

 

 

テールライトが照らしているのは、これまでの日々だ。

ヘッドライトが照らしているのは、これからの日々だ。

 

 

 

 

 

気が付けばもう、夜は明けていた。