家路
見送るは、愛しき思い出。
見守るは、哀しき夕暮れ。
別れを告げる鐘が鳴る町。
聞き慣れた歌が響く公園。
カレーの匂いが漂う帰り道。
再会を誓い合った分かれ道。
泥だらけの靴と汗塗れの服。
泥だんごの罅と初めての恋。
傷だらけの掌と母の眼差し。
握り締めた拳と父の言の葉。
果たせた約束と、果たせなかった約束。
気付けた幸せと、気付けなかった幸せ。
見送るは、愛しき思い出。
見守るは、哀しき夕暮れ。
抱き締めるは、遠き日の温もり。
噛み締めるは、家路を急ぐ幸せ。
泥だらけでも、何度でも歩き出せる。
傷だらけでも、何度でも立ち上がれる。
あの日のように。
あの頃のように。
家まで、あと少し。