何者
"普通"って何だろう。
"普通"であることが、そんなに偉いことなのだろうか。
"普通"であることが、そんなに正しいことなのだろうか。
"普通"に生きろとあなたは言うが、その"普通"が僕には分からない。
"普通"に生きられない僕は、一体どうすれば良いのだろうか。
"普通"に生まれた筈なのに、"普通"に死んでいくことが怖い。
"普通"に生まれたからこそ、"特別"に憧れてしまった。
"普通"にも"特別"にもなれなかった僕は、何者なのだろうか。
"普通"にも"特別"にもなれなかった僕も、何者かになれるのだろうか。
何者にもなれないまま、生きていくのだろうか。
何者にもなれないまま、死んでいくのだろうか。
劣等感と焦燥感が募るばかりの毎日だ。
漠然とした不安や恐怖に襲われて、一人で塞ぎ込んでいた。
このままではいけないと分かっているのに、何も出来ない自分自身に嫌気が差した。
自分自身に何も期待などしていなかったが、誰の期待にも応えられない自分自身に失望した。
目の前に立ちはだかる現実に、ただただ絶望した。
そうして自らを責め続けるうちに、何かが壊れた。
そうして塞ぎ込んでいる時間こそが何よりも無駄である、と無理矢理思うことにした。
其処から抜け出す為に、自分自身の心を騙すことにした。
自分自身の心を騙して、前に進むことを選んだ。
"普通"であろうとするから、苦しいのだ。
"特別"になろうとするから、苦しいのだ。
何者かであろうとするから、苦しいのだ。
何者かになろうとするから、苦しいのだ。
"普通"であろうとする必要なんて、無い。
"特別"になろうとする必要なんて、無い。
何者かであろうとする必要なんて、無い。
何者かになろうとする必要なんて、無い。
僕は何者にもならずに、何者でも無い自分自身を生きていく。
何者でも無いということは、何者でもあるということなのだ。
何者にもなれないということは、何者にもなれるということなのだ。
僕が"普通"なのか、あなたが"普通"なのか。
僕が"特別"なのか、あなたが"特別"なのか。
僕が正しいのか、あなたが正しいのか。
僕が何者なのか、あなたが何者なのか。
それはきっと、人生最期の日に初めて分かることだ。
僕の墓石の前で泣いてくれる人が、僕の墓石にどんな言葉を刻むのか。
それだけが、僕の命の証明になる。
それこそが、僕の命の価値になる。
種明かしをするには、まだ早い。
答え合わせをするには、まだ早い。
人生はまだ、始まったばかりだ。