木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

造花として

造花として、この世に生まれた。

造花として、この世で生きている。

 

自らの意志で咲くことは出来ない。

自らの意志で枯れることも出来ない。

自らの意志で散ることは出来ない。

自らの意志で還ることも出来ない。

 

水も、光も、土も、風も。

この世の美しいものたちに触れることさえ出来ない。

 

造花として、この世に生まれてしまった所為で。

生身の花として、この世に生まれることが出来なかった所為で。

 

偽物として、この世に生まれた自らの一生を呪い続けている。

本物として、この世に生まれた奴らの一生を呪い続けている。

 

 

 

僕は、本物になりたかった。

僕はずっと、本物になりたかった。

 

自らの意志で咲いてみたかった。

自らの意志で枯れてみたかった。

自らの意志で散ってみたかった。

自らの意志で還ってみたかった。

 

水も、光も、土も、風も。

この世の美しいものたちに触れてみたかった。

 

造花として、この世に生まれてしまった所為で。

生身の花として、この世に生まれることが出来なかった所為で。

 

偽物として、この世に生まれた自らの一生を悔やみ続けている。

本物として、この世に生まれた奴らの一生に焦がれ続けている。

 

 

 

無いものねだりを繰り返す毎日は、もう疲れた。

無いものねだりを繰り返す毎日を、もう終わりにしたい。

 

"たられば"ばかりを繰り返す生活は、もう疲れた。

"たられば"ばかりを繰り返す生活を、もう終わりにしたい。

 

造花も、生身の花も。

全部、焼き尽くしてしまいたい。

偽物も、本物も。

全部、壊してしまいたい。

 

造花も、生身の花も。

全部、燃えてなくなればいい。

偽物も、本物も。

全部、消えてなくなればいい。

 

何かが変わる日を夢見て、今日も生きている。

全てが終わる日を夢見て、今日も生きている。

 

造花として、今日も生きている。

偽物として、今日も生きている。

 

 

 

自らの意志で咲くことは出来ない。

自らの意志で枯れることも出来ない。

自らの意志で散ることは出来ない。

自らの意志で還ることも出来ない。

 

それでも、生きていかなければならない。

 

造花として生まれたことを受け入れて、造花として生きていかなければならない。

偽物であることを受け入れて、偽物として生きていかなければならない。

 

生身の花がどのくらい美しいか。

そんなことは誰よりも分かっている。

本物がどのくらい美しいか。

そんなことは誰よりも分かっている。

 

だからこそ、憧れたのだ。

だからこそ、諦めたのだ。

 

 

 

生身の花は咲くことが出来るが、いつかは枯れて土に還る。

生身の花は栄養を与えて貰わなければ、咲き続けることが出来ない。

造花は咲くことこそ出来ないが、決して枯れることはない。

造花は栄養を与えて貰わなくても、美しく咲き続けることが出来る。

 

造花として生まれた"お陰"で、美しい姿のまま生きることが出来る。

造花として生きている"お陰"で、美しい姿のまま死ぬことが出来る。

 

本物になろうとする心は、偽物にしか宿らない。

本物であろうとする心は、偽物にしか宿らない。

本物になろうとする意志は、本物には宿らない。

本物であろうとする意志は、本物には宿らない。

 

偽物として生まれた"お陰"で、心を育むことが出来る。

偽物として生きている"お陰"で、意志を貫くことが出来る。

 

 

 

生身の花よりも、造花が劣るなんてただの幻想だ。

本物よりも、偽物が劣るなんてただの妄想だ。

 

造花として生まれたあなたに、恐れるものなど何もない。

偽物として生まれたあなたに、失うものなど何もない。

 

この世で長く生き続けるのは、造花だ。

この世で強く生き続けるのは、偽物だ。

 

造花よ、笑え。

偽物よ、戦え。

 

 

 

 

 

造花は、花よりも美しい。

 

偽物は、本物よりも愛しい。