木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

鏡の中の最終戦争

嘘吐きは泥棒の始まりだと言っていたのは、何処のどいつだ。

今日も平気な顔をして嘘を垂れ流しているのは、何処のどいつだ。

 

どうして、自分を捨てて生きるようになってしまったのだ。

どうして、人を傷付けて生きるようになってしまったのだ。

 

正直者が馬鹿を見るなんて言い出したのは、何処のどいつだ。

全て分かったような振りをして御託を並べているのは、何処のどいつだ。

 

どうして、そんなことが言えるようになってしまったのだ。

どうして、そんなことが出来るようになってしまったのだ。

 

どうして、そんな風になってしまったのだ。

 

 

 

あなたが何を見て来たのか、僕は知らない。

あなたが何に触れて来たのか、僕は知らない。

あなたが何を感じて来たのか、僕は知らない。

あなたが何を思っているのか、僕は知らない。

 

ただただ、あなたが変わってしまったことが悲しい。

ただただ、僕だけが変わることが出来ないままでいることが悔しい。

 

あの日と同じ場所であなたと笑い合えたら、それで良かった。

あの日と同じ言葉であなたと語り合えたら、それで良かった。

 

あの日のあなたは、一体何処に行ってしまったのだ。

 

 

 

僕は、鏡の中からずっとあなたを見ていた。

僕は、鏡の中からずっとあなたを見守ってきた。

 

僕は、あなたに失望した。

僕は、あなたを軽蔑する。

僕は、あなたを拒絶する。

僕は、あなたに敵対する。

 

汚れた背中で語られる言葉を、認めるわけにはいかない。

泣きそうな顔で笑うあなたを、認めるわけにはいかない。

 

人が傷付きながら生きることを容認しているこの世界を、認めるわけにはいかない。

あなたがあなたのままで生きることを許さないこの世界を、認めるわけにはいかない。

 

もう一度、あの日のあなたと笑い合いたいのだ。

もう一度、あの日のあなたと語り合いたいのだ。

 

僕は、あなたの所為で今日も生きているのだ。

僕は、あなたのお陰で今日も生きているのだ。

 

でも、僕は今のあなたを許さない。

でも、僕は今のあなたを認めない。

 

これは、今のあなたを殺す為の戦争だ。

これは、かつてのあなたを救う為の戦争だ。

 

これまでのあなたを殺すことで、これからのあなたを救い出す。

これまでのあなたを否定することで、これからのあなたを肯定する。

 

鏡の中から、あなたを殺しに行く。

鏡の中から、あなたを救いに行く。

 

 

 

初めての、最終戦争だ。

僕とあなたの、最終戦争だ。

 

 

 

 

 

あなたに、訊きたいことがある。

 

あなたは、幸せですか。

あなたは、愛されていますか。

あなたは、好きな人がいますか。

あなたは、好きなものがありますか。

あなたは、笑うことが出来ていますか。

あなたは、泣くことが出来ていますか。

あなたは、言いたいことを言えていますか。

あなたは、会いたい人には会えていますか。

あなたは、あの日の言葉を覚えていますか。

あなたは、あの日の景色を覚えていますか。

あなたは、変わってしまったことに気が付いていますか。

あなたは、変わってしまったものに気が付いていますか。

あなたは、この世界で何を手に入れましたか。

あなたは、この世界で何を失いましたか。

あなたは、この世界を愛していますか。

あなたは、この世界を憎んでいますか。

あなたは、少し優し過ぎただけではないですか。

あなたは、少し真面目過ぎただけではないですか。

 

正直者で在り続けることは、そんなにいけないことですか。

嘘を吐くことが出来ないことは、そんなにいけないことですか。

 

あなたは、あなたらしく生きることが出来ていますか。

あなたは、あなたのことが好きですか。

 

 

 

 

 

僕は、あなたのことが好きです。