感覚が足りない
指の動作一つで世界を変えてしまうかもしれないという、感覚が足りない。
簡単に知らない人と繋がることが出来てしまうという、感覚が足りない。
自らの言葉一つで誰かを傷付けてしまうかもしれないという、感覚が足りない。
大切な人と結んだ約束ほど容易く解けてしまうという、感覚が足りない。
当たり前のことにさえ気が付くことが出来ない鈍い感覚に、一体どんな価値があるというのか。
失うことでしか気が付くことが出来ないような鈍い感覚に、一体どんな意味があるというのか。
どうせその程度の感覚しかないのならば、何を失っても気が付くことが出来ないくらい鈍い感覚であって欲しかった。
どうせいつかは悲しい思いをするのならば、何かを失う前に気が付くことの出来る鋭い感覚であって欲しかった。
より鈍い感覚を求めれば、世界は闇に染まる。
より鋭い感覚を求めれば、世界は光に染まる。
闇は僕を黒く塗り潰す。
光は僕を白く塗り潰す。
何れにせよ、何も見えなくなる。
自分自身の感覚を意識することでしか、自分自身の座標を確かめることは出来ない。
闇の中を行くなら、光を目印に。
光の中を行くなら、闇を目印に。
目指す場所は、光と闇の狭間にある。
僕は今、此処にいる。
お前は今、何処にいる。