カウントダウン
止まらぬ季節の道端で、時計の針に目を凝らしている。
終わらぬ世界の片隅で、鼓動の音に耳を澄ませている。
遠い日の面影が、じっと睨み付けてくる。
遠い日の面影が、そっと語り掛けてくる。
変わらぬ景色の庭園で、孤独の沼に足を取られている。
染まらぬ記憶の奥底で、貴方の頬に手を伸ばしている。
遠い日の面影が、ずっと絡み付いている。
遠い日の面影に、ずっと縋り付いている。
温度も、鮮度も、粘度も、感度も。
片時も忘れぬように、瞼の裏に焼き付けてある。
片時も離さぬように、胸の奥に仕舞い込んである。
何度も、何度も、何度も、何度も。
片時も薄れぬように、心の底に刻み付けている。
片時も離れぬように、命の傍に括り付けている。
チクタク、チクタク。
懐中時計は、止まらない。
少しずつ、少しずつ。
涙が渇く音がする。
少しずつ、少しずつ。
心が歪む音がする。
少しずつ、少しずつ。
体を蝕む音がする。
少しずつ、少しずつ。
命を削る音がする。
カウントダウンは、止まらない。