木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

アルカナ

ほんの些細な幸福も気付けない癖に。

ほんの些細な幸福を噛み締めて良いものか。

 

ほんの些細な約束も果たせない癖に。

ほんの些細な約束に生かされて良いものか。

 

 

 

いつかは変わりゆくものだと知っていたなら。

いつかの幸福に気付くことが出来たのだろうか。

 

いつかは終わりゆくものだと知っていたなら。

いつかの約束を果たすことが出来たのだろうか。

 

 

 

 

 

幸福を掴んだ筈の掌で、幸福を握り潰した。

幸福を放した筈の掌で、幸福を包み直した。

 

約束を結んだ筈の指先で、約束を断ち切った。

約束を解いた筈の指先で、約束を繋ぎ直した。

 

 

 

 

 

僕は、あの日の幸福に殺されている。

僕は、あの日の幸福に救われている。

 

僕は、あの日の幸福を噛み締めている。

僕は、あの日の幸福に生かされている。

 

 

 

僕は、あの日の約束に殺されている。

僕は、あの日の約束に救われている。

 

僕は、あの日の約束を噛み締めている。

僕は、あの日の約束に生かされている。

 

 

 

 

いつも、不確かなものに殺されている。

いつも、不確かなものに救われている。

 

いつも、不確かなものを噛み締めている。

いつも、不確かなものに生かされている。

 

 

 

 

 

ほんの些細な幸福も気付けない僕も。

ほんの些細な幸福を噛み締めて良いものか。

 

ほんの些細な約束も果たせない僕も。

ほんの些細な約束に生かされて良いものか。

 

 

 

 

 

幸福は、いつも掌にある。

約束は、いつも指先にある。

 

 

 

この世の全ては、その手の中にある。