木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

言葉の森、詩人の墓

綴りたいことは「ありがとう」という言葉だけ。

綴りたいことは「さようなら」という言葉だけ。

綴りたいことは「ごめんなさい」という言葉だけ。

綴りたいことは「また、明日」という言葉だけ。

 

綴りたいことは、それだけ。

綴りたいことは、ただそれだけ。

 

遺したいものは「ありがとう」という想いだけ。

遺したいものは「さようなら」という想いだけ。

遺したいものは「ごめんなさい」という想いだけ。

遺したいものは「また、明日」という想いだけ。

 

遺したいものは、それだけ。

遺したいものは、ただそれだけ。

 

伝えたいことは「ありがとう」という言葉だけ。

伝えたいことは「さようなら」という言葉だけ。

伝えたいことは「ごめんなさい」という言葉だけ。

伝えたいことは「また、明日」という言葉だけ。

 

伝えたいことは、それだけ。

伝えたいことは、ただそれだけ。

 

届けたいものは「ありがとう」という想いだけ。

届けたいものは「さようなら」という想いだけ。

届けたいものは「ごめんなさい」という想いだけ。

届けたいものは「また、明日」という想いだけ。

 

届けたいものは、それだけ。

届けたいものは、ただそれだけ。

 

 

 

ただそれだけなのに、どうして上手く綴ることが出来ないのだろう。

ただそれだけなのに、どうして上手く遺すことが出来ないのだろう。

ただそれだけなのに、どうして上手く伝えることが出来ないのだろう。

ただそれだけなのに、どうして上手く届けることが出来ないのだろう。

 

たった一つの言葉を綴る為に、どうして幾つもの言葉が必要なのだろう。

たった一つの想いを遺す為に、どうして幾つもの想いが必要なのだろう。

たった一つの言葉を伝える為に、どうして幾つもの言葉が必要なのだろう。

たった一つの想いを届ける為に、どうして幾つもの想いが必要なのだろう。

 

 

 

綴ろうとすればするほど、上手く綴ることが出来なくなってしまう。

遺そうとすればするほど、上手く遺すことが出来なくなってしまう。 

伝えようとすればするほど、上手く伝えることが出来なくなってしまう。

届けようとすればするほど、上手く届けることが出来なくなってしまう。

 

言葉を知れば知るほど、言葉の森に迷い込んでしまう。

想いを知れば知るほど、想いの沼に沈み込んでしまう。

詩人になればなるほど、詩人の墓に追い込まれてしまう。

大人になればなるほど、人間の闇に飲み込まれてしまう。

 

 

 

だけど、それでも。

 

 

 

どうしても「ありがとう」の一言だけでは足りない。

どうしても「さようなら」の一言だけでは足りない。

どうしても「ごめんなさい」の一言だけでは足りない。

どうしても「また、明日」の一言だけでは足りない。

 

せめて「ありがとう」くらいは、ちゃんと言いたいじゃないか。

せめて「さようなら」くらいは、ちゃんと言いたいじゃないか。

せめて「ごめんなさい」くらいは、ちゃんと言いたいじゃないか。

せめて「また、明日」くらいは、ちゃんと言いたいじゃないか。

 

 

 

自分の言葉で、綴ることが出来るように。

自分の想いを、遺すことが出来るように。

 

自分の言葉で、伝えることが出来るように。

自分の想いを、届けることが出来るように。

 

 

 

今日も、言葉は森の中に在る。

今日も、詩人は墓の中に居る。

 

今日も、言葉の森を往く。

今日も、詩人は墓を掘る。

 

 

 

 

 

 

今日こそは、綴ることが出来るだろうか。

今日こそは、遺すことが出来るだろうか。

今日こそは、伝えることが出来るだろうか。

今日こそは、届けることが出来るだろうか。

 

 

 

 

 

今日こそは、ちゃんと言えるだろうか。