木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

影送り

あの空の向こうに、あなたはいるのだろうか。

どの雲の向こうに、あなたがいるのだろうか。

 

澄み渡る空の季節を越えて、あなたを探す。

溶け残る雲の隙間を抜けて、あなたを探す。

 

あの空の向こうには、きっとあなたはいない。

どの雲の向こうにも、きっとあなたはいない。

 

翳りゆく空は姿を変えて、あなたを隠す。

霞みゆく雲は形を変えて、あなたを隠す。

 

 

 

一人で歩いた帰り道と、二人で歩いた帰り道。

 

一人で遊んだ影送りと、二人で遊んだ影送り。

 

一人で結んだ約束と、二人で結んだ約束。

 

一人で過ごした思い出と、二人で過ごした思い出。

 

 

 

あの日の残像が胸を巡る。

あの日の残像が胸を破る。

 

思い出ばかりが胸を巡る。

思い出ばかりが胸を破る。

 

あなたはもう、此処にはいない。

あなたはもう、何処にもいない。

 

あなたは、いない。

あなたが、いない。

 

 

 

 

 

二人で歩いた帰り道を、まだ覚えている。

 

二人で遊んだ影送りを、まだ覚えている。

 

二人で結んだ約束を、まだ覚えている。

 

二人で過ごした思い出を、まだ覚えている。

 

 

 

あなたが消えないように、影の中に思い出を閉じ込めよう。

あなたを忘れないように、影の中で思い出を抱き締めよう。

 

あなたに届くように、何度でも影を送ろう。

あの日と同じように、何度でも影を繋ごう。

 

 

 

いつも、影が傍にいる。

いつも、影は共にある。

 

 

 

 

 

一人でも、大丈夫。

二人なら、大丈夫。