木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

瓦礫の下で

瓦礫の下で、生きている。

薄暗く、窮屈な世界で、生きている。

 

泥水を啜って、生きている。

地面に這い蹲って、生きている。

 

あの日からずっと変わらない空の重力に、押し潰されそうだ。

あの日からずっと描いていた夢の残骸に、押し潰されそうだ。

あの日からずっと続いている後悔の残像に、押し潰されそうだ。

これからもずっと続いていく現実の残酷さに、押し潰されそうだ。

 

いつ潰されるか分からない恐怖と、いつ崩れてしまうか分からない不安。

もうどうにかなりそうだ。

 

僕の身体が押し潰されるのが先だろうか。

僕の心が壊れるのが先だろうか。

 

 

 

この場所から抜け出す日を、ずっと夢見ている。

瓦礫の隙間から漏れる一筋の光を、僅かな希望にして生きている。

 

どれだけ叫んでも、外の世界からの応答は無い。

どれだけ願っても、外の世界からの助けは無い。

 

もうどれくらい此処に居るのだろう。

あとどれくらい此処に居れば良いのだろう。

 

何処かに行きたいのに、何処にも行けない。

此処から抜け出したいのに、此処から抜け出せない。

 

この場所が隔絶された空間であることを実感すればするほど、光を求めることが虚しくなった。

 

どうせ闇の中で生きるのなら、光なんて見たくなかった。

どうせこの場所から出られないのなら、外の世界なんて知りたくなかった。

 

どうせ叶わない願いなら、希望なんていらなかった。

 

 

 

 

 

瓦礫の下で、生きている。

薄暗く、窮屈な世界で、生きている。

 

泥水を啜って、生きている。

地面に這い蹲って、生きている。

 

瓦礫を壊すことは、諦めた。

瓦礫の隙間から漏れる光を掴むことは、諦めた。

 

だからと言って、瓦礫の下で生きていく気は無い。

だからと言って、瓦礫の下で生涯を終える気は無い。

 

 

 

穴を掘っている。

 

瓦礫の下から、抜け出す為に。

瓦礫の隙間から漏れる光の源を、この目で見る為に。

 

自らの墓を、自らの手で作り上げる為に。

この場所と外の世界を、自らの手で繋げる為に。

 

手が汚れようとも、僕は進む。

爪が剥がれようとも、僕は進む。

 

どんな結末が待ち受けていようとも、僕は生きる。

 

 

 

ただ死ぬ時を待つだけの人生なんて、僕は御免だ。

 

自分の死ぬ場所くらい、自分で決める。

自分の生きる場所くらい、自分で決める。

 

自分の死に方くらい、自分で決める。

自分の生き方くらい、自分で決める。

 

自分の存在くらい、自分で示す。

 

 

 

 

 

瓦礫の下に、生まれた。

 

瓦礫の下で、生きてきた。

 

瓦礫の下から、逃げて来た。

 

瓦礫の下から、此処に来た。

 

 

 

 

 

瓦礫の下が、僕の故郷だ。