木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

あの頃、この頃

あの頃は大きいと思っていた校舎が、今ではこんなにも小さく感じる。 あの頃は高いと思っていた教壇が、今ではこんなにも低く感じる。 あの頃は遠いと思っていた星が、今ではこんなにも近く感じる。 あの頃は広いと思っていた空が、今ではこんなにも狭く感じ…

無いものねだり

やりたいことばかりだ。 出来ないことばかりだ。 知りたいことばかりだ。 知らないことばかりだ。 言いたいことばかりだ。 言えないことばかりだ。 届けたいことばかりだ。 届かないことばかりだ。 叶えたい夢ばかりだ。 叶わない夢ばかりだ。 泣きたい夜ば…

レイトショー

決して、思い通りの人生ではない。 決して、期待通りの人生ではない。 決して、脚本通りの人生ではない。 決して、幸福ばかりの人生ではない。 決して、挫折をする為に生まれたわけではない。 決して、裏切られる為に生まれたわけではない。 決して、血涙を…

血の繋がり

滔々と流るもの。 脈々と続くもの。 沸々と滾るもの。 赤々と染まるもの。 酸化するもの。 受け継がれるもの。 淘汰されるもの。 美化されるもの。 才能を呪う者。 感性を笑う者。 才能を殺す者。 感性を失う者。 宿命を憎む者。 運命を愛する者。 宿命に死…

革命前夜

一字に心が宿る。 一行に心が宿る。 一瞬に心が宿る。 一生に心が宿る。 一字に命が灯る。 一行に命が灯る。 一瞬に命が灯る。 一生に命が灯る。 心さえ殺せば、上手く笑えるか。 心さえ殺せば、上手く生きられるか。 命さえ生かせば、上手く笑えるか。 命さ…

ジョーカー

浮世に泣いて、浮世を嗤う。 浮世を憂いて、浮世を想う。 己を憎んで、己を愛する。 己を殺して、己を生かす。 誰も代わってくれない。 誰も分かってくれない。 いつも、一人だ。 ずっと、一人だ。 僕は、一人だ。 あなたは、一人だ。 僕も、独りだ。 あなた…

ひぐらしの声

あなたがいなくなって、もう何度目の夏でしょうか。 あの日からずっと、覚めない夢を見ているようです。 あの時は、つまらないことで泣いていました。 あの頃は、くだらないことで笑っていました。 そんな小さな幸せが当たり前のことなどではないと、わたし…

シュレッダー

言葉が、飲み込まれていく。 空白が、飲み込まれていく。 記憶が、飲み込まれていく。 感情が、飲み込まれていく。 一つ、また一つ。 大きな音を立てて、心が飲み込まれていく。 言葉が、引き裂かれていく。 空白が、引き裂かれていく。 記憶が、引き裂かれ…

青い春

痛い。 些細なことで、傷付いた。 些細なことで、傷付けた。 痛い。 何気無い言葉で、傷付いた。 何気無い言葉で、傷付けた。 痛い。 些細な言葉で、傷付き合った。 些細な言葉で、傷付け合った。 痛い。 何気無い言葉で、傷付き合った。 何気無い言葉で、傷…

刹那

刹那。 産声を上げる音。 汚れなき白い音。 誰にも望まれることなく、その生涯は幕を開ける。 誰にも讃えられることなく、その生涯は続いていく。 刹那。 断末魔を上げる音。 錆び付いた黒い音。 誰にも愛されることなく、その生涯は幕を閉じる。 誰にも看取…

アルカナ

ほんの些細な幸福も気付けない癖に。 ほんの些細な幸福を噛み締めて良いものか。 ほんの些細な約束も果たせない癖に。 ほんの些細な約束に生かされて良いものか。 いつかは変わりゆくものだと知っていたなら。 いつかの幸福に気付くことが出来たのだろうか。…

百日紅

もう、何も見ることが出来なくなるんじゃないか。 もう、何も聞くことが出来なくなるんじゃないか。 もう、何も触ることが出来なくなるんじゃないか。 もう、何も話すことが出来なくなるんじゃないか。 もう、何も書くことが出来なくなるんじゃないか。 もう…

モノクロ

もう一度、金色に揺れる稲穂を見たかった。 もう一度、銀色に濡れる砂漠を見たかった。 もう一度、桜色に染まる水面を見たかった。 もう一度、緑色に溶ける木立を見たかった。 あの日、色が消えた。 あの日、光が消えた。 あの日、音が消えた、 あの日、声が…

言葉の森、詩人の墓

綴りたいことは「ありがとう」という言葉だけ。 綴りたいことは「さようなら」という言葉だけ。 綴りたいことは「ごめんなさい」という言葉だけ。 綴りたいことは「また、明日」という言葉だけ。 綴りたいことは、それだけ。 綴りたいことは、ただそれだけ。…

本懐

何かを書くことが出来ず、何かを消すことも出来ない。 何かを作ることが出来ず、何かを壊すことも出来ない。 何かを繋ぐことも出来ず、何かを切ることも出来ない。 何かを結ぶことが出来ず、何かを解くことも出来ない。 全てを許すことが出来ず、全てを拒む…

メメントモリ

あとどれくらい、立っていられるのだろう。 あとどれくらい、座っていられるのだろう。 あとどれくらい、起きていられるのだろう。 あとどれくらい、眠っていられるのだろう。 あとどれくらい、走っていられるのだろう。 あとどれくらい、歩いていられるのだ…

影送り

あの空の向こうに、あなたはいるのだろうか。 どの雲の向こうに、あなたがいるのだろうか。 澄み渡る空の季節を越えて、あなたを探す。 溶け残る雲の隙間を抜けて、あなたを探す。 あの空の向こうには、きっとあなたはいない。 どの雲の向こうにも、きっとあ…

線香花火、最後の夜

ちゃんと、心は決めた。 ちゃんと、覚悟は決めた。 それでも、どうしても別れの朝は悲しくなってしまう。 それでも、どうしても最後の夜は愛しくなってしまう。 ちゃんと、見送ると決めた。 ちゃんと、見届けると決めた。 だけど、きっと目が覚めたらあなた…

いつものように

いつも、無力な自分を憎んでばかりだ。 いつも、無能な自分を恨んでばかりだ。 いつも、無念の日々を過ごすばかりだ。 いつも、無情な現実を恐れてばかりだ。 想いを募らせるばかりでは何も伝わらない。 夢を描き続けるばかりでは何も始まらない。 遠い過去…

家路

見送るは、愛しき思い出。 見守るは、哀しき夕暮れ。 別れを告げる鐘が鳴る町。 聞き慣れた歌が響く公園。 カレーの匂いが漂う帰り道。 再会を誓い合った分かれ道。 泥だらけの靴と汗塗れの服。 泥だんごの罅と初めての恋。 傷だらけの掌と母の眼差し。 握り…

白い渦

誰もが己の正義を疑わない。 誰もが己の誤謬を認めない。 誰もが己の罪を受け入れない。 誰もが己の罰を受け止めない。 「誰にも嫌われたくない」 「誰かを嫌う勇気もない」 いつの間にか、そんなことさえ言えなくなってしまった。 いつの間にか、そんなこと…

思考停止

一日の始まりに食べるものさえ選べない。 一日の終わりに食べるものさえ選べない。 一日の始まりに聴く音楽さえ選べない。 一日の終わりに聴く音楽さえ選べない。 一日の始まりを彩る空の色さえ選べない。 一日の終わりを彩る空の色さえ選べない。 一日の始…

案山子

今日も、僕は笑っている。 今日も、あの子は泣いている。 僕が笑顔を零すその裏で、誰かが涙を流している。 僕が幸福に生きているその陰で、誰かが不幸なまま死んでいく。 僕の笑顔は、誰かの涙の上に存在している。 僕の幸福は、誰かの不幸の上に存在してい…

獣の如く

ただ、喰いたいから喰っている。 ただ、飲みたいから飲んでいる。 ただ、歩きたいから歩いている。 ただ、走りたいから走っている。 ただ、戦いたいから戦っている。 ただ、叫びたいから叫んでいる。 ただ、壊したいから壊している。 ただ、笑いたいから笑っ…

アレグロ

また一つ、季節が過ぎていく。 振り返ることもなく、季節が過ぎていく。 また一つ、生命が消えていく。 燃え尽きることもなく、生命が消えていく。 少しずつ、景色は変化していく。 泣いている暇もないくらいに、景色は変化していく。 少しずつ、世界は加速…

何もない世界

この世界に生まれた理由など、何もない。 この世界に生きている理由など、何もない。 この世界で生きてきた理由など、何もない。 この世界で生きていく理由など、何もない。 この世界に生まれた道理など、何もない。 この世界に生きている道理など、何もない…

誰も傷付けることのない者たち

土のはぐくみ。 花のゆらめき。 虫のさざめき。 鳥のさえずり。 川のせせらぎ。 風のささやき。 森のざわめき。 月のほほえみ。 生命は、生命を育てて生きている。 生命は、生命を与えて生きている。 生命は、生命を愛して生きている。 生命は、生命を燃やし…

春を想う

あなたが好きだと言っていた、煙草の味が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、言葉の色が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、絵の価値が分かるようになりました。 あなたが好きだと言っていた、歌の意味が分かるように…

本当のこと

追い付きたくて、 追い付けなくて、 追い越したくて、 追い越せなくて、 認めたくて、 認めたくなくて、 認められたくて、 認められなくて。 答えたくて、 答えられなくて、 答えて欲しくて、 答えてくれなくて、 教えたくて、 教えられなくて、 教えて欲し…

柘榴

毒を呑み、蜜を吐く。 赤く熟れた果実は、摘み取られる。 蜜を呑み、毒を吐く。 黒く膿んだ果実は、棄て去られる。 頭から潰された果実が、血の花を咲かせている。 中身まで砕かれた果実が、血の海に浮かんでいる。 ゆっくりと時間をかけて産み落とされた生…