木霊、言霊。

備忘録か、遺言か、ラブレターか。

カウントダウン

止まらぬ季節の道端で、時計の針に目を凝らしている。 終わらぬ世界の片隅で、鼓動の音に耳を澄ませている。 遠い日の面影が、じっと睨み付けてくる。 遠い日の面影が、そっと語り掛けてくる。 変わらぬ景色の庭園で、孤独の沼に足を取られている。 染まらぬ…

生涯泥棒

誰かの初恋を盗む。 誰かの失恋を盗む。 誰かの憂鬱を盗む。 誰かの不安を盗む。 誰かの反省を盗む。 誰かの後悔を盗む。 誰かの言葉を盗む。 誰かの感情を盗む。 誰かの憧憬を盗む。 誰かの喪失を盗む。 誰かの不幸を盗む。 誰かの幸福を盗む。 誰かの絶望…

二束三文

金にもならない顔を洗って、 金にもならない髪を梳いて、 金にもならない垢を落して、 金にもならない糞を出して、 金にもならない詩を書いて、 金にもならない歌を作って、 金にもならない舞を踊って、 金にもならない絵を描いて、 金にもならない汗を流し…

輪郭を失くした、その後で

ファインダーばかりを覗き込んでいた。 大切な笑顔を、残しておきたかった。 大切な景色を、残しておきたかった。 ファインダーばかりを覗き込んでいた。 大切な時間を、残しておきたかった。 大切な瞬間を、残しておきたかった。 ファインダーばかりを覗き…

風船

ありとあらゆる感情を飲み込んで。 ありとあらゆる現状を受け入れて。 ありとあらゆる幻想を飲み込んで。 ありとあらゆる現実を受け入れて。 膨れ上がったこの心で、何処まで飛べるのだろう。 膨れ上がったこの心で、何処まで行けるのだろう。 破裂しそうな…

失敗作

悉く夢想する。 悉く悲観する。 悉く弁解する。 悉く逃避する。 真っ当な人間になりたかった。 欠陥品に、何が出来る。 悉く失敗する。 悉く後悔する。 悉く持戒する。 悉く喪失する。 真っ当な人間でありたかった。 粗悪品に、何が出来る。 その口で何が言…

或る時は、寄せては返す波のように。 或る時は、凪いでは戦ぐ風のように。 或る時は、晴れては曇る空のように。 或る時は、浮いては沈む月のように。 或る時は、解けても結ぶ糸のように。 或る時は、折れても尖る針のように。 或る時は、脱げても纏う衣のよ…

涙が止まらないのは、きっと雨の所為だ。 何も見えなかったのは、きっと雨の所為だ。 何も知らなかったのは、きっと雨の所為だ。 何も言えなかったのは、きっと雨の所為だ。 何も出来なかったのは、きっと雨の所為だ。 涙が止まらないのは、きっと雨の所為だ…

告解

天邪鬼で、ごめんなさい。 嘘吐きで、ごめんなさい。 臆病者で、ごめんなさい。 半端者で、ごめんなさい。 妄言ばかりで、ごめんなさい。 戯言ばかりで、ごめんなさい。 我儘ばかりで、ごめんなさい。 理想ばかりで、ごめんなさい。 何も言えなくて、ごめん…

泥曰

その身に白を纏う。 その首に白を結ぶ。 その肌に花を飾る。 その目に涙が滲む。 これからの、あなたを想う。 その身に黒を纏う。 その首に黒を結ぶ。 その肌に花を飾る。 その目に涙が滲む。 これまでの、あなたを想う。 誰かにとっての寧日は、誰かにとっ…

詩人の数式

どれだけ言葉を学んでも、あなたを識るに値しない。 どれだけ言葉を比べても、あなたを量るに値しない。 どれだけ言葉を連ねても、あなたを記すに値しない。 どれだけ言葉を集めても、あなたを飾るに値しない。 どれだけ言葉を選んでも、あなたを想うに値し…

後悔に愛されている

ずっと、後悔している。 自分とばかり慰め合って生きてきたこと。 他人とばかり罵り合って生きてきたこと。 過去とばかり慰め合って生きてきたこと。 未来とばかり罵り合って生きてきたこと。 ずっと、後悔している。 あなたに手を差し延べられなかったこと…

有象無象

人を虐げてはいけません。 人を壊してはいけません。 人を騙してはいけません。 人を疑ってはいけません。 人を恨んではいけません。 人を恐れてはいけません。 人を憎んではいけません。 人を殺してはいけません。 絵空事だ、と流されるだろうか。 綺麗事だ…

消えてしまうかもしれない

悲報だとか、凶報だとか。 朝、目が覚めたら最低なニュースは消えてくれるかもしれない。 朗報だとか、吉報だとか。 朝、目が覚めたら最高なニュースは消えてしまうかもしれない。 悪夢だとか、凶夢だとか。 夜、目を閉じたら最低な物語が始まりを告げるかも…

水鏡

身に余る富は持てず。 身に余る位は持たず。 身に余る情は持てず。 身に余る欲は持たず。 身に余る才は持てず。 身に余る夢は持たず。 身に余る心は持てず。 身に余る己は持たず。 完璧な人にはなれず。 完璧な人などあらず。 完璧な命にはなれず。 完璧な命…

その先へ

全てを売り払ってでも買い取りたい物があるか。 全てを脱ぎ捨ててでも添い遂げたい者がいるか。 全てを明け渡してでも言い切りたい心があるか。 全てを投げ捨ててでも成し遂げたい夢があるか。 全てを抱え切れずとも受け止めたい物があるか。 全てを犠牲にし…

一色

恐れを知らない馬鹿者で在りたい。 汚れを知らない偽善者で在りたい。 矜持を捨てない好事家で在りたい。 野心を捨てない負け犬で在りたい。 飾り気を捨てた飾り物で在りたい。 直す気も失せる壊れ物で在りたい。 混じり気の無い不純物で在りたい。 朽ちる気…

約束

辞めてしまったあいつの為にも。 死んでしまったあいつの為にも。 簡単には辞められないよな。 簡単には捨てられないよな。 泣き続けていたあいつの為にも。 戦い続けていたあいつの為にも。 簡単には割り切れないよな。 簡単には負けられないよな。 簡単に…

もう一度

もう二度と、帰れない家。 もう二度と、眠れない部屋。 もう二度と、訪れない街。 もう二度と、迷えない道。 もう二度と、会えない人。 もう二度と、話せない友。 もう二度と、見れない顔。 もう二度と、聞けない声。 もう二度と、動けない足。 もう二度と、…

後の祭り

踊っている間に、全てを失くしてしまった。 歌っている間に、全てを失くしてしまった。 遊んでいる間に、全てを失くしてしまった。 笑っている間に、全てを失くしてしまった。 探している間に、全てを失くしてしまった。 選んでいる間に、全てを失くしてしま…

怠惰の代償

何もかも面倒だ。 瞼を開けることが面倒だ。 瞼を閉じることが面倒だ。 目を凝らすことが面倒だ。 目を慣らすことが面倒だ。 口を開くことが面倒だ。 口を噤むことが面倒だ。 話をすることが面倒だ。 話を聞くことが面倒だ。 顔を作ることが面倒だ。 顔を隠…

あの日の僕よ

あの日の僕を、探してくれ。 あの日の僕を、尋ねてくれ。 あの日の僕を、見つけてくれ。 あの日の僕を、見つめてくれ。 あの日の僕を、認めてくれ。 あの日の僕を、愛してくれ。 あの日の僕を、忘れてくれ。 あの日の僕を、分かってくれ。 あの日の僕よ、教…

睡蓮

泥沼の中でも、咲き誇る花であれ。 荒天の中でも、舞い踊る鳥であれ。 戦場の中でも、頬を撫でる風であれ。 暗闇の中でも、道を照らす月であれ。 涙に濡れた世界の中でも、寛容な人であれ。 嘘に塗れた世界の中でも、誠実な人であれ。 夢に破れた世界の中で…

境界線

僕とあなたとでは、顔の形が違う。 僕とあなたとでは、声の色が違う。 僕とあなたとでは、指の長さが違う。 僕とあなたとでは、髪の太さが違う。 僕とあなたとでは、鼻の高さが違う。 僕とあなたとでは、爪の硬さが違う。 僕とあなたとでは、力の強さが違う…

告白

まだ、何も話していない。 まだ、何も聞いていない。 まだ、何も伝えていない。 まだ、何も答えていない。 まだ、何も覚えていない。 まだ、何も忘れていない。 まだ、何も結んでいない。 まだ、何も解いていない。 まだ、何も望んでいない。 まだ、何も失っ…

ピリオド

どうして上手く生きられないのだろう。 どうして上手く消えられないのだろう。 数え切れない疑問符を飲み込んで泣いている。 抱え切れない疑問符を吐き捨てて笑っている。 どうして何も忘れられないのだろう。 どうして何も思い出せないのだろう。 忘れられ…

四季は巡れど

春と呼ぶには、痛過ぎて。 恋と呼ぶには、早過ぎて。 夏と呼ぶには、遠過ぎて。 夜と呼ぶには、浅過ぎて。 秋と呼ぶには、寒過ぎて。 旅と呼ぶには、知り過ぎて。 冬と呼ぶには、長過ぎて。 夢と呼ぶには、脆過ぎて。 待てど暮らせど、あなたは来ない。 寝て…

ドローイング

この筆で描きたいもの。 この紙に遺したいこと。 この線で紡ぎたいもの。 この絵で伝えたいこと。 目を凝らせば凝らすほど、何も見えなくなる。 耳を澄ませば澄ますほど、何も聞こえなくなる。 声を枯らせば枯らすほど、何も言えなくなる。 心を捧げれば捧げ…

神様の天秤

自分の弱さと誰かの弱さ。 自分の強さと誰かの強さ。 自分の短所と誰かの短所。 自分の長所と誰かの長所。 自分の才能と誰かの才能。 自分の感性と誰かの感性。 自分の言葉と誰かの言葉。 自分の個性と誰かの個性。 自分の憧憬と誰かの憧憬。 自分の後悔と誰…

少年

音に埋もれた。 光に焦がれた。 夢に溺れた。 道に迷った。 声を忘れた。 色を失くした。 夢に破れた。 自分に敗れた。 言葉に殺された。 言葉に救われた。 音楽に殺された。 音楽に救われた。 人間に殺された。 人間に救われた。 世界に殺された。 世界に救…