畜生
求めるのは、もうやめだ。
応えるのは、もうやめだ。
恐れるのは、もうやめだ。
信じるのは、もうやめだ。
戯けるのは、もうやめだ。
怠けるのは、もうやめだ。
逃げるのは、もうやめだ。
誤魔化すのは、もうやめだ。
痛みに慣れることになろうとも。
別れを告げることになろうとも。
半生を捨てることになろうとも。
畜生に堕ちることになろうとも。
ただ、この道を往く。
ただ、その道を征け。
相生
騙したくないのに、
騙すしかないのか。
黙りたくないのに、
黙るしかないのか。
泣きたくないのに、
泣くしかないのか。
笑いたくないのに、
笑うしかないのか。
やりたくなくても、
やるしかないのか。
腐りたくなくても、
腐るしかないのだ。
咲きたくなくても、
咲くしかないのだ。
帰りたくなくても、
帰るしかないのだ。
進みたくなくても、
進むしかないのだ。
やりたくなくても、
やるしかないのだ。
生きたくないなら、
死ぬしかないのか。
生きたくないから、
死ぬしかないのだ。
生きたくないのに、
死にたくないのか。
生きたくないのに、
死にたくないのだ。
死にたくないのに、
生きたくないのか。
郷愁
また、笑えるようになってしまいました。
また、信じるようになってしまいました。
また、触れるようになってしまいました。
また、憧れるようになってしまいました。
また、戯けるようになってしまいました。
また、構えるようになってしまいました。
また、描けるようになってしまいました。
また、求めるようになってしまいました。
また、あの日の自分を呪ってしまいました。
また、あの日の続きを願ってしまいました。
また、あなたの言葉に縋ってしまいました。
また、あなたの面影を探してしまいました。
また、あの日に戻りたくなってしまいました。
また、あなたに会いたくなってしまいました。
何処へ行く
友達一人も語れずに、何を語れると言うのだ。
友達一人も救えずに、何を救えると言うのだ。
恋人一人も守れずに、何を守れると言うのだ。
恋人一人も許せずに、何を許せると言うのだ。
他人一人も覚えずに、何を覚えると言うのだ。
他人一人も殴れずに、何を殴れると言うのだ。
自分一人も殺せずに、何を殺せると言うのだ。
自分一人も愛せずに、何を愛せると言うのだ。
涙一つも拭わずに、何処へ行くと言うのだ。
縁一つも繋がずに、何処へ行くと言うのだ。
命一つも磨かずに、何処へ行くと言うのだ。
心一つも残さずに、何処へ行くと言うのだ。
金曜日
夢に破れて飲んだ涙を、酒に浸して静かに笑う。
時を忘れて生きた証を、棚に並べて綺麗に飾る。
嘘に疲れて病んだ心を、夜に隠して家路を急ぐ。
傷に塗れて膿んだ命が、膝を抱えて母胎で眠る。
蘖
何度摘み取られても、この場所で咲いていたい。
何度薙ぎ倒されても、この場所で戦っていたい。
何度切り刻まれても、この場所で泣いていたい。
何度踏み躙られても、この場所で生きていたい。
命が尽きるその日まで、この場所で生きていたい。
命が尽きるその日には、この場所で死んでみたい。